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キャリサポインタビュー

自分の人生で何が大事なのかをよく考えること。
大事だと思うことはなにもあきらめないで欲しい。

2021年10月9日

長年、外資系企業で人事業務を担当されていた松尾美香さん。
日本企業とのカルチャーの違いや、自分に合った企業の見極め方などお話しいただきましたが、本当に大事なのは「就社」ではなく「就職」。
学生のころから自分の人生についてきちんと考えることの大切さを伺いました。

Q、現在、どのようなお仕事をされていますか?

アサヒグループホールディングスという、アサヒビールの親会社で人事担当役員付の顧問をしています。
私のキャリアはずっと外資で、直近20年くらいは人事を担当していました。
最後の会社はAIGジャパンという保険会社です。
人事担当役員を引退して、少し楽をしたいなと思っていたら、アサヒから声がかかって、
今は週3日パートのおばさん勤務です。(笑)

Q、人事って具体的にはどのようなお仕事なのでしょうか?

人事はとても幅広い業務ですが、学生さんに身近なのは採用ですね。
新卒採用ではまず会社のことを知ってもらいます。
会社に魅力を感じてもらって入社したら、次は会社の中で活躍してもらわないといけないので、
きちんとフィット感のある部署に配属し、活躍してもらったら評価をします。
評価するのは直属の上司ですが、評価する方法や評価の考え方などをきちんと構築するのが人事部門の仕事です。

評価が終わると、その評価に対して報酬が支払われます。
その会社に合った報酬制度を作るのも人事の仕事です。
あとは毎月お給料が支給されるプロセスも人事の仕事になります。

夏になると新卒採用が始まり、年末になると評価の時期、外資系だとその時期に賞与も決定します。
1月になると新しい年度の目標設定をする、それが1年間の人事サイクルです。

Q、今の会社も同じような流れですか?

外資系の人事制度と、日本企業の人事制度ってすごく違っていて、人事部門の役割も全然違います。
アサヒは今、海外ビジネスが事業の半分くらいになっていてグローバル企業になりかけているところです。
そうすると、日本の人事制度を海外に持ち出しても全然理解されないので、グローバルな人事制度に変えていく必要があります。

今はその辺のお手伝いをしています。

Q,ご自身の就職活動はどのようなものでしたか?

私はちょっとバックグラウンドが変わっていて、日本のインターナショナルスクールを卒業後渡米し、アメリカの大学を出て帰国した後、2年間だけOLをしていました。

OLを辞めてまたアメリカに戻ってMBAを取って、シティバンクというアメリカの銀行に就職しました。
ビジネスサイドの仕事を15年くらいしていましたかね。
マーケティングとか財務とか、営業もやりましたし、今でいうカスタマーエンゲージメント、お客様満足度ですね、それを調査する部署などいろいろ経験をしました。

何度か転職をしましたが、最終的にAIGという保険会社で新しい企業文化を作るということをやりました。
当時AIGでは日系の保険会社と外資系の保険会社を統合することが決まっていたので、新しい企業文化を作る必要があったんです。

Q,最初から銀行へ行きたいという気持ちがあったんですか?

MBAを取りに大学院に行ったんですが、そこにリクルーティングに来てくれるのが圧倒的に金融が多かったんですね。
その金融の中でも投資銀行は桁が大きすぎて私には理解できなかったので行きたくなくて…(笑)

もう少し身近な金融として一般のお客様向けのビジネスを展開していたシティバンクを選びました

Q,今まで人事をご担当されてきて、これから就職しようという学生に対して思うことはありますか?

ありますね。
一番考えて欲しいのは、自分は何が好きなんだろう、どういうものが好きなんだろうということです。
自分が興味のあることをやってもらいたいなと思います。

あとは会社のカルチャーとのフィット感について考えて欲しいです。
例えば外資系の企業ですと外国人の社長のことをファーストネームで呼ぶのが当たり前の世界です。
でも日本では社長どころか社員同士のE-mailでも「苗字+様」と書くのが普通です。
こういうカルチャーの違いを許容できるのかとか、そこはしっかり考えて自分に合うカルチャーを選んで欲しいなと思いますね。

Q,学生はどうやって会社のカルチャーを知ったらいいんでしょう?

手っ取り早いのは大学の先輩がいれば、その人の話を聞くのが一番です。
それと就職する時のリクルーターの行動をよく見てて欲しいです。

新卒の面接だと「選ばれる」という感覚が強くて、緊張してると思うんですけど、就職の面接っていうのはどのレベルであっても、お互いが選んでるんですよ。それを忘れないてほしいなと思います。

学生も選ぶ権利があるし、会社側も選ぶ権利があり、立場は同等なので学生もよく観察して欲しいですね。

Q,採用で印象に残ってる学生はいますか?

だいぶ昔の話になっちゃいますが、私がシティバンクの新卒採用をしていた頃はリクルートスーツの時代じゃなかったんです。
男性は紺かグレーのスーツくらいで、女性は紺のスーツを着ている人もいればグレーの人もいて、その当時一番印象残ったのはベージュのスーツを着てきた人ですね。
本当に素敵なベージュのスーツで、中にはピンクのスーツの人もいました。自分の良さをアピールできるように着る服も選ぶことができた時代でしたね。

AIG時代のことですが、どういう洋服を着ていいとかダメとかいう、会社のドレスコードを撤廃しました。
なぜかと言うと、自分で決めてほしいからです。
自分のキャリアとか自分が何をしたいのか、ということを自分で決めて欲しいのに、朝起きて何を着るか自分で決められないんじゃ困りますから。
今日はお客様のところに行って大切な商談があるんだったらちゃんとスーツで行くだろうし、
そうじゃなければ別にネクタイを締めて行かなくていいし。自分で自分のことを考えて決めるということを、
自分が着る服からちゃんと決められるようになろうねってことです。

Q,自分自身の人生を決める上で、大切にしている事は何ですか?

私は自分の中で価値観をすごくきちんと持っていて、常に優先順位をつけています。
まず第一に家族が一番。
そして何事も頑張る、一生懸命やること。
何事も言葉に出してコミュニケーションをとること。
それをいつも心がけています。

特に女性の皆さんにはよくお話をするんだけど、何かを犠牲にする必要って全くないと思うんですよね。
何かを諦めないといけないということは全くなくて、人生の中で自分にとって一番大切なのは何かというのは、常に自分周りの家族とか恋人とかパートナーとかと話し合ってほしいなと思います。

私は最初から家族は欲しいと思っていたし、自分の子供は欲しいと思っていたし、仕事は定年ぐらいまでは続けるつもりでいたので、夫となる人と結婚する前にそんな話をしてました。
やっぱりそこで価値観が全然合わない人だったら、考えないといけないですよね、相手がよくないのか(笑)それとも自分の価値観を変えるのか…。

若い女性の方はどっちか選ばないといけないと思うんだけど、そんなことはなくて何でも欲しいものは手に入れればいいと思うんですよ。
だけどその代わりもう一つ大事なことがあります。「周りを頼る」ということ。
全部自分で100%とやろうと思うと折れちゃうから。
私も子育てするのに、両親やベビーシッターさんや保育園の先生、本当にいろんな人にお世話になりました。
今息子がいてくれてすごく幸せですよ。だから何事も諦めないで欲しいなと思います。

男の人もね、例えば奥さんとなる人に家にいて欲しいのか一緒に働いて頑張ってほしいのか、
頑張ってほしいんだったらちゃんと自分も家庭を大切にする準備ができているのか、そういう会社を選ぶのか、そういうところまで考えながら人生は決めていって欲しいなと思っています。

新卒の面接の時にそこまで考える必要はないのかもしれないけど、人生のターニングポイントではちゃんと考えて欲しいですね。

Q,就活生に向けての一言

いつも若い人たちお話をするときに言うんですけど、チャンスっていうのは目の前に提示されるわけではない時もあるんです。
もちろん目の前に来るときもあるけど、その辺にぶら下がっている時もある。
それに気づかないといけないから、いつでもアンテナを張っておいて欲しい。
チャンスを見つけて、それ掴む準備が出来てると思ったらすかさず取りに行くべきです。

でもその「準備」が100%である必要があるのかなっていうのも考えてほしい。
80%でもいいんじゃないかとか、このぐらいできていればもしかしたら取りに行ってもどうにかなるかもしれないとか、その辺のバランスを考えて欲しいなと思います。
チャンスが来たときに、自分が満足いくだけの準備が常にできてるわけではないですからね。

松尾美香
現在は日系企業の人事顧問として活動。
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